みえるとか みえないとか ~1月きらきらうきうきどんどんの日~

 

 昨日は、1月の「きらきらうきうきどんどんの日」(人権を確かめ合う日)でした。ヨシタケシンスケさんの絵本「みえるとかみえないとか」の読み聞かせを聴いて、学年の発達段階に合わせて、自分の中の「あたりまえ」や「人と同じこと・ちがうこと」 について、じっくり見つめ直す時間を取りました。

 今回の「きらうきどんの日」の目標をきちんと書くと…

「ふつうであること」と「ちがうこと」について、絵本における捉え方や児童自身が実体験においてどう捉えているのかを知ることを通じて、多様な他者との違いを積極的に認め、お互いの個性を尊重しながら関係性を築き、望ましい生き方を探求していく道徳的実践意欲と態度を養う…ということになります。

 

 さて、このお話のあらすじをざっと紹介すると… 

「ぼく」は宇宙飛行士。いろんな星を調査するのが仕事です。ある星で出会ったのは、「前にも後ろにも目がある宇宙人」。「ぼく」が後ろを見えないことを知るとかわいそうに思って、ものすごく気を遣ってくれるので変な気持ちになってしまいます。

 この星では前も後ろも見えるのが当たり前なのですが、生まれつき「後ろが見えない宇宙人」もいて、「ぼく」と同じなのですごく話が盛り上がります。

 地球では後ろが見えないのが当たり前ですが、他の星には他の星の「当たり前」があるのです。例えば、足が長いのが当たり前、空を飛べるのが当たり前、体が柔らかいのが当たり前、他にも……。

「前にも後ろにも目がある宇宙人」の中にも生まれつき「全部の目が見えない宇宙人」がいました。この全盲の宇宙人の世界の見え方は、「ぼく」とは全然違うものでした。例えば、自分の予定はメモの代わりに録音しておく、外を歩くときは杖を使う、自動販売機では買ってみるまで何が出てくるかわからない……他にも「ぼく」とはたくさんの違いがあるのです。

「ぼく」は、目の見えない人の世界があるとしたらこんな感じなのかなと想像します。例えば、声のいい人がモテる、手触りや匂いで服を選ぶ、粘土メモを使う……他にもたくさんの想像が膨らみます。

 この絵本では、見える人と見えない人の世界の感じ方の違いを描きます。さらには、見えないからできないことや見えないからこそできること、もっと言えば誰だって少なからず「違い」があることを描きます。

 このお話は、「障がい」というものをちょっと違ったアプローチで考え直す機会を与えてくれます。また、みんなが感じている「当たり前」を見直す機会を与えてくれる絵本です。

 

 私(校長)が印象深く感じたフレーズがいくつかありまして…、 

「じぶんと にているひとは、あんしんできる。…じぶんたちと ちがうひとは、やっぱり ちょっと きんちょうしちゃう。じぶんと なにがちがうかが、よく 分からないから。わからないのは こわいから。・・・」

「じぶんと ちがうひとでも、おたがいの くふうや しっぱいや はっけんを おしえあったら、きっと みんな『へー!』ってなる。…」

 

 この「『へー!』ってなる。」というフレーズに心が動かされました。この「へー!」という感覚を知ることが、障害理解にとってとても大切なことなのではないかと私は思いました。障害に対する誤解や差別などを生んでしまう根源は、それぞれの個人にある「障害のイメージ」だと考えられます。そのイメージは、良いにしろ悪いにしろ障害そのものを決めつけてしまうことに繋がります。だから障害について初めて知った時に、良いも悪いもない「へー!そうなんだ」という感覚があれば、誤解なく純粋に障害理解を深めていけるのではないかと考えました。

 もうすでにいろんな「固定化されたイメージ」を持ってしまっている我々大人に比べて、子どもたちは「へー!そうなんだ」という感覚を持つことで、「人との違い」を純粋に、「当然の違い」として受け入れやすいのではないかと…。 

 絵本の後半に出てくる、

「おなじところを さがしながら ちがうところを おたがいに おもしろがれば いいんだね。」というフレーズにそんな意味が込められているような気がしました。

 

 絵本の最後、唐突ともいえる場面描写でお話は終わります。

 4本も手のある宇宙人が、「ぼく」を見て言います。

「・・・えっ?キミ、手が2ほんしかないの?かわいそう!」

 そして「ぼく」が少しとまどい、はにかむように答えます。

「いやー。やっぱり ふべんそうに みえちゃうよねー。」

 

 この最後の会話に、子どもたちはどんなことを思ったのか…それが昨日の「きらきらうきうきどんどんの日」の肝(ポイント)だったと思います。

 

 早速、6年生の学級通信に子どもたちの思いが綴られていました。

 写真では見にくいかもしれませんが、「のどかさん」の感想に、

「絵本の最後の『えー!腕2本しかないの!?』の会話は『かわいそう』ではなく、『そうなんだ!』と認め合った方がうれしい!」

と綴られていました。

 きちんと「ちがいを互いにおもしろがる=認め合う、尊重し合う」ととらえているんだなと感心しました。

 

 それにしてもこの学級通信…担任の先生の思いがあふれんばかりに伝わってくるいい通信だなと…これまた感心しきりの私です。